行雲先生と対談 「いい品を作るには」

◎◎◎インタビュアー
お久しぶりです、先生。
今回の対談もよろしくお願いします。

◎◎◎先生
はい。よろしくお願いします。

◎◎◎インタビュアー
さて、今回のテーマは「いい品を作るには」ということなんですが。

◎◎◎先生
そうなんです。こういった対談で取り上げてもらった方がよりわかりやすいと思ったので、 今回はこのテーマでいきたいと思います。

ちなみにここで言う「いい品」っていうのは、芸術品のような作品のことではなく、食器や置きものなどの工芸品のことです。
ですので、芸術を語るような感性うんぬんの話は出てこないので、ご了解ください。


◎◎◎インタビュアー
そうですか。
お店で売っているような陶芸で作られる工芸品のことですね。
わかりました。

じゃまず、いい品を作るにはズバリ何でしょう。

◎◎◎先生
そうですね。これにはいくつかの要件があります。
まずひとつめは目利きになることです。


◎◎◎インタビュアー
目利きって、あの「~鑑定団」とかでよく聞く、あれですか。

◎◎◎先生
そうです。あの目利きです。
今日は伝統的なやきものについて話すのですが、 こういったものの目利きになって欲しいと。

やきものっていうのは何千年も前に作られてから現在に至っている訳ですけど、 その中でも5百年ほど前に作られたやきものが今も名品として残っています。
また、唐津や美濃なんかのやきもの産地も数百年の間、やきもの競争の中を勝ち抜いてきた訳ですよね。 ってことは単純にいいものだからなんです。悪いものだったらとっくの昔に淘汰されている。

もちろん商売上の問題もありますから、産地問屋さんが全国の大手百貨店やら小売店さんを押さえてきたこともあるでしょう。
その辺を差し引いたとしても、伝統的なやきもので今も残ってるものは単純にいいものと思って間違いない。


◎◎◎インタビュアー
ふむふむ。

◎◎◎先生
だから、まず自分の目を鍛えて、いいものを見分けて欲しいんですね。 これは音楽なんかと同じで、いい曲を聴いたり、いろんなジャンルを 幅広く聞くと耳が肥えてきますよね。
やきものも然りで、いいものを美術館、専門店、あるいは本などで 見ることによって目が肥えてきます。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。確かに音楽は聴いてるといい曲、今ひとつの曲ってわかってきますよね。 やきものも同じなんですね。

◎◎◎先生
そうなんです。まず名品と言われるものをじっくりと見て、自分の目を肥やして欲しい。
これが大事な一点です。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。

◎◎◎先生
次に大事なのが、やきものを作る技術を磨くってこと。

いいものが見極められるようになったら、自分の頭の中で完成した形をイメージできるようになります。

その形を目の前にある土にぶつけてみる。ここでうまく表現できないと他の人にイメージが伝わらない。
そのためにも、しっかりとした技術を持った先生に教わり、いわゆる陶工の技術を学んで欲しい。


◎◎◎インタビュアー
陶工ってのは陶器を作る人?

◎◎◎先生
そうです。陶器の職人と思ってください。 陶芸家や窯元なんかで陶器作りを生業にしている人たち。
こういった方を陶工といいます。


◎◎◎インタビュアー
じゃ、先生もある意味、陶工ですね。

◎◎◎先生
そうです。私も陶工の一人です。
ただ、今日は私と言うより一般的な陶工の方たちについて語らせてもらいます。


◎◎◎インタビュアー
わかりました。

◎◎◎先生
陶工ってのは全国にたくさんいますが、中でも独創的な発想や表現を持った方たちは 自分で窯を築いて独立しています。
陶芸家ってのは、たいていそういった方たちです。


◎◎◎インタビュアー
ふむふむ。

◎◎◎先生
で、陶工は伝統的なやきものの技術を継承しています。だから、彼らは陶器作りにおいて知らないものはない。まず陶器を見ればほとんどの品は作れますよ。

もちろん、芸大出て芸術の素材としてたまたま「土」を選んだ人たちもいます。 彼らは特に食器やなんかの生活雑器を作らないって人も多い。作風も奇抜ですしね。
でも大学できっちり陶器作りの基礎は教わってるわけだから、やれって言われれば作れますよ。

で、そういった何でも作れる陶工に製作のテクニックを教わるんです。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。

◎◎◎先生
ある程度の期間練習すると、自分の頭の中にあるイメージを土に表現できるようになります。こうなればしめたもんですよ。
ただ、イメージ作りの苦手な方もいますから、そんな方はロクロの前に作りたい品の写真でも貼って、それと同じ形を作れるように練習するといい。それも上達の一方法です。


◎◎◎インタビュアー
それはいいやり方ですね。

◎◎◎先生
そうです。
で、問題なのはこのロクロのテクニックなんですね。
器用な方だと人が廻してる姿を見て真似できますけど、実際はなかなか上手く廻せない。 土ころしひとつとってもうまくいかない。 この土ころしがうまくいかないと成型は絶対に失敗しますから。



◎◎◎インタビュアー
そうなんですか。

◎◎◎先生
そうです。土ころしからぐい呑み、飯碗から練習して少しづつ難しいものへとチャレンジしていく。
作る順番ってのも上手くなるには必要です。
遊びでやるんなら何をどんな順番で作ってもいいんですが、上手くなりたいのなら 作る手順は学んだ方がいい。
まずはぐい呑み、次は飯碗って具合に。


◎◎◎インタビュアー
ふむふむ。

◎◎◎先生
例えば急須を作るにはその前に他の種類の品を作る技術も必要になってくる。ある意味、急須作りってのは小物のロクロ成型の総まとめとも言えます。細かいパーツを何個か作って、くっつけていくんですから、手先の器用さと根気も要ります。
ここら辺の細かいことはウチの教室では教えていますが、この場では割愛しましょう。

ただ言えるのは、いきなり難しいものにチャレンジしてもいい品はなかなかできないって ことです。 地道に順序だてて作っていくと、だんだんいつの間にかに何でも作れるようになります。

そういう意味でも、ロクロはきっちりと陶工に教わった方が上達は早いです。


◎◎◎インタビュアー
なるほどー。

◎◎◎先生
いろんなものが作れるようになると上達が実感できるので楽しくなりますよ。


◎◎◎インタビュアー
そうですね。陶芸に限らず上達してくると楽しいですよね。

◎◎◎先生
そうです。それで作った作品は必ず焼くようにする。これも大事な点です。
やきものは焼いてなんぼの世界ですから。かならず完成形にまでもっていかないとだめです。
ロクロで成型したらハイ終了では進歩がない。
削って、釉薬掛けて、最後まで自分で手を入れた完成品を見て初めて気付く個所があります。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。

◎◎◎先生
土が乾燥しただけではわからないことは、たくさんあるんですね。
もし焼かないのなら、ロクロで成型してすぐに潰した方がいい。 あるいは、高台を削る前に潰すのがいいです。
最後まで削って乾燥までいった作品はヒビ割れない限り必ず焼いてください。
もちろん、これ以上焼いたら家に置く場所が無いなんて方は焼かなくても結構ですけど、初心者から中級者の方はなるべく焼くようにしましょう。

で、焼きあがった作品を見て、ここはもうちょっと薄くしようとか、高台はこう削った方がいいなとか、 釉薬掛けは今度はこう掛けてみようとかの課題が見つかるんです。


◎◎◎インタビュアー
ふむふむ。

◎◎◎先生
ここら辺を雑にすると進歩しないですよ。上達するのに時間がかかってしまう。
完成品のイマイチの所を見つけて、どんどん改良していって欲しいですね。
そうすればきっと上手くなりますよ。


◎◎◎インタビュアー
なるほどー。






◎◎◎先生
話を次のポイントに写しましょう。
いい品を作るのに三つ目の大事な点は、ずばり「いい材料を使う」ってことです。

◎◎◎インタビュアー
いい材料ですか。

◎◎◎先生
そうです。実はこれは「やきものの質感」を出すには一番重要なポイントです。

◎◎◎インタビュアー
そうなんですか。

◎◎◎先生
ええ。やきものは市販の並品の粘土でも庭にある粘土でも何でも作ることができる。 ただ、並品の土では相当な細工をくわえないと焼いた時の土味や釉薬の質感にいいものが 出てこないんです。

もちろん、陶芸を始めた初心者の方たちならこういった並土を使って作陶してもらった方がいい。 個性的な土よりも市販の並土の方がクセが無いのでロクロが廻しやすい。 それは事実です。

また初心者の方は並土といい土の違いは全くもってわからないでしょう。
ウチでも並土は使っていますが、クセが無いので使いやすいですね。 ただこの土でいいものを作るには造形に変化を与えるか、絵付けで魅せるかのどちらかしかないんです。 ここが私に言わせると、いい材料を使うよりある意味難しいとこなんです。

◎◎◎インタビュアー
ふむふむ。

◎◎◎先生
いい材料はきっちりとロクロがひければそれだけで味わいのある器ができる。 もちろんその味を引き出す釉掛けのテクニックや焼成の技術は必要なんですが。
ただ、陶芸教室で習っている方たちはロクロなんかの成型がメインですから、焼きのテクニックは要らない。 だったら、いい材料を使った方がいいものが出来やすいですね。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。

◎◎◎先生
ただ間違えないで欲しいのは、ここで言ういい材料ってのは「個性的な材料」ってことですよ。 個性さえあれば、その辺の山の中の土でも一向に構わない。

それで、熊谷でもいい土が手に入るやきものを作ろうと。
その結果が、今私がやっている灰釉であり、粉引なんかであったわけです。



◎◎◎インタビュアー
なるほど。初めに材料ありきなんですね。




◎◎◎先生
多分、地元の熊谷で土が取れたとして、どう焼いてもパッとしないと。 でも、それを使って作陶しなけりゃならないとして、「土見せ」で焼いてくれって言われたら、炭化を掛けて土を真っ黒にして製作しますよ。


◎◎◎インタビュアー
そうですね。それしかないですものね。

◎◎◎先生
ええ。そのくらい材料ってのはいい質感のやきものを作る上で、大事なポイントになるんですね。

だから、熊谷で窯を築いてそこで作陶する以上、そこで作れる最善のやきものを選択した結果が灰釉やら粉引ってことになるんです。


◎◎◎インタビュアー
ふむふむ。


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