陶芸教室主宰 行雲(コウウン)先生と対談

陶芸教室主宰 行雲先生と対談 「いい品を作るには2」

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◎◎◎先生
で、今度はいい材料の選択に入るんだけども、実はいい材料ってのは業者から買うと値段が高いんです。
でも、これは仕方ないですね。業者も強気の値段を張ってきますよ。焼くといいものなんだから当然でしょっていう。



◎◎◎インタビュアー
なるほど。

◎◎◎先生
もちろん安価な材料でいいものもあります。
代表は青磁なんかそうですよね。鉄を使っているから材料費が安く作れる。 施釉も扱いやすいし、男女問わず好まれる色合いです。

ただ、青磁の青色は磁器に掛けるときれいに出ますが、土ものだとはっきりしない。 土の持つ鉄分と微妙に反応して、ちょっと濁った感じになる。 土ものに青磁だったら、相当濃い目に施釉して貫入を出すくらいにしないと良さが出ないです。

そうなると施釉のテクニックが要る。まして高台近辺に濃い目に施釉すると焼成後に垂れることがある。そうなるとせっかくの作品の高台部を削ることになる。 じゃ、磁器に掛けるかとなると磁器をロクロでひくのは経験がいるので、こりゃどうしよってことになる。

ここら辺が陶芸の面白さでもあるところなんですけどね。


◎◎◎インタビュアー
ふむふむ。

◎◎◎先生
だからウチの会員の方でも、中級者位の腕前になったと思ったら、どんどん私に「違う土使わせろ」とか、「別な釉薬使わせてくれ」って言ってきて欲しい。

もちろんそういった土や釉薬は実費で購入してもらうんですが、その方がいい質感のものが作れますよ。

また、自分でいい土や釉薬やらを見つけて持ち込んでもいいんです。どれを選んでいいかわからなければ、こっちで業者ものを仕入れて使ってもらいます。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。

◎◎◎先生
ただ、ここら辺は費用がかかることなので、できるだけ自分で何とかしたいって人もいますよね。
そうなると例えば釉薬に使う灰なんかは自分で木々を燃やすだとか、近所のお店で灰を使ってるとこがあったら分けてもらうとかの方法で手に入れる。

もちろん灰でも粉末状になったきれいな所を使うわけだから、相当燃やさないと必要な量は取れないです。でも時間のある人はチャレンジしてもいい。
その灰が焼いてきれいな色になるかは焼成してみないとわからないけど、少なくても市販の並品釉薬を使うのなら、自分で手に入れた灰の方が味わいがあります。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。






◎◎◎先生
例えば、赤土に白い釉薬を掛けたいとする。
赤土を白くするってのは簡単に見えて実は結構手間がかかるんです。
身の回りの食器って白い色が多いですよね。でも大抵白い器ってのは磁器でできていることが多い。

磁器はもとが陶石っていう白い石でできているので、焼くと土色が白くなります。 元々真っ白の土ですから、透明釉掛けるだけで白いやきものができます。

ところが、赤土は鉄分を多く含んでいるので焼くと赤茶っぽくなりますよね。 これを白く魅せるのは苦労するんです。


◎◎◎インタビュアー
そうなんですか。なんか白って基本色だから簡単そうなんですけど。

◎◎◎先生
そうなんですね。でも白とか黒とかの単純色は実は奥が深い。 やきものに限らずごまかしがきかない色ですから。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。

◎◎◎先生
磁器が発見される前は白いやきものは人々の憧れの的だった。
そこで日本でも取れる白っぽい土を赤土に掛けたのが白化粧の始まりです。
あるいは昔から日本人のかたわらにある、とあるものを焼いた灰から作った釉薬を掛けて白くした。
朝鮮唐津の白や萩焼きの白釉なんかは、全部こういう身近な原料で作られています。


◎◎◎インタビュアー
ふむふむ。

◎◎◎先生
じゃ、赤土を白くするならある灰を使った釉薬にしようと。
ここではとりあえず☆灰ってことにします。

ただ、天然ものの☆灰は高いんです。原料の灰自体が高いですから。
でも赤土を白く見せたくて、なおかつ質感の高い釉薬ってことになると、こういった天然のものを使うしかない。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。

◎◎◎先生
もちろん合成灰やジルコン、チタンなんかを使った白系の釉薬はあります。 でも天然ものの白と比べると質感がどうかなと。
やっぱり、合成より天然の方がいいものができる。


◎◎◎インタビュアー
ふむふむ。

◎◎◎先生
で、自分で天然もの白釉作るにはどうすればいいかなと。
まず灰が要りますよね。
さっき言った☆灰つくるのに、自分で☆を燃やして釉薬にする位の量をってことになったら大変な作業ですよ。 煙まみれになるし。

しかも取れた☆灰は今度はスタンパーで潰して、細かいメッシュのフルイに掛けて通過したものだけを使う。でないと釉薬にした時に灰が浮いてきてしまうんですね。
陶工ならこういった作業は仕事だからなんてことないけど、一般の方が自分で☆灰を作るにはこのように非常に手間がかかる。

じゃ、業者から購入しましょうと。でも業者がそれだけの手間を掛けている訳だから当然高価になる。



◎◎◎インタビュアー
そうですね。

◎◎◎先生
じゃウチの会員さんは業者から買うか買わないかってことになると、その辺の判断は私には何とも言えないです。

作った品を人に見せるのがメインであれば、いいものを使って質感の高いものを作ればいいし、自分で使うのが中心であまり費用を掛けたくないのであれば、並材を使えばいいと思います。

もちろん、いいものは釉薬の状態で買うと高いから原料だけ手に入れてもらえば、あとは私が作ります。 その方が安くあがります。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。先生に作ってもらえるっていうのはいいですね。

◎◎◎先生
そうですね。作る手間はかかるけど、会員さんが質のいいやきものを作ってくれれば、 作り甲斐があるってもんです。この位の手間はなんてことないですよ。


ちなみに、人へのプレゼント品なんかは高くていい材料を使って、普段の練習で作るんだったら並材を使うっていうやり方もあります。 その方が経済的かも知れません。


◎◎◎インタビュアー
そうですね。練習と本番では分けたほうがいいかもしれませんね。

◎◎◎先生
そう思います。
ただ、材料が変わるとロクロのテクニックも若干変わってきますから、本番で使う前にテストで何回か焼いてみた方がいいです。その方が本番で失敗しないですから。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。本番用にテストで焼くってのも必要なんですね。

◎◎◎先生
そうです。
自分で使う分には必要ないけど、人にあげる物やコンテストなんかの出品物を作るんなら、「テスト焼成」は重要です。

やきものはテストに始まりテストに終わる。 やきものの種類によっては、数十回テスト焼成する時もあるくらいです。
パッと焼いて、いきなり本番で成功するだろうって考えはやめた方がいい。

まずテストで焼いてから、同じ材料、同じ釉薬を使ってプレゼント品などの本番用を作る。これはプロの陶工なら誰でもやってることです。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。だからいいものが作れるんですね。
お店で並んでる陶芸品ていうのは、何度もテストを経て成功した品が置かれてるんですね。 納得です。






◎◎◎インタビュアー
ところでなんですけど、もし材料が並品でいいものを作るとしたら先生はどうしますか?

◎◎◎先生
そうきましたね。
シンプルな並材をうまく使うとして、さあ、どうしましょうと。
この材料でいいものを作れってことになると、やっぱり造形と絵付けにこだわるしかないですね。


◎◎◎インタビュアー
絵ですか。

◎◎◎先生
そうですね。土の質感はいろんなものを混ぜたり加えたりすれば、ちょっとは質のいい土味が出てきますが簡単ではない。 そもそも混ぜる作業が大変です。


◎◎◎インタビュアー
ですよね。土に混ぜてこねるのは大変そう。

◎◎◎先生
そうです。
そうなると造形で変化を付けましょうと。
例えば、小鉢なんかは普通に並材でロクロでひいて作っても、あんまりパッとしない。 でも縁に変化をつけて切ったり、歪めたり、花ビラ型にしたりすると単味の釉薬でも充分使えるようになる。そこにちょっとした絵付けを施せば、ヘタするとプレゼント品にもなる。

そういった細かいテクニックで並材でも充分使えるようになるんです。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。

◎◎◎先生
あとは、絵が描ければシンプルな形でも充分使えます。
小鉢や中皿をぴゃっとロクロでひきっぱなしにしても絵が描ければ絵付けに目線がいくので、並材の質感でも充分通用しますよ。

でも陶芸やる方は絵心のある人は少ないから、やっぱり形にこだわった方がいいかなと。


◎◎◎インタビュアー
そうですね。なかなか絵ってむずかしいんですよね。
でも形に変化を与えるのって、これもまたむずかしくないですか。

◎◎◎先生
そうでもないですよ。結構簡単にできます。

小鉢や皿なんかの変化形ってのは基本の型があるんです。
ウチでもこの変化型をいろいろ教えてますけど、こういった伝統的な変化の型を覚えてからオリジナルの型を生み出せばいい。

伝統工芸ってのは伝統を継承することから始めた方がうまくいくことが多いんです。 芸術なんだから最初からオリジナルってことになると相当な才能のある人じゃないと いきずまっちゃいますよ。

やはり基本の型を学んで、そこから改良していった方がいい。 「基本さえ覚えておけば、迷ってもまた元に戻れる」って、よく言いますよね。 そのくらい基本の型は重要です。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。
絵なんかも型があるんですか。

◎◎◎先生
絵についての基本型ってのは特に無いですね。
ただ、よく使われる伝統的な絵ってのはありますから、それを基本型として覚えてもいい。

ただ、陶芸で描かれる絵ってのは簡単なものでいいんです。 小学生が書いたような稚拙な絵でも充分だし、その方がかえって味わいがある。

もちろん、絵心のある人は器をキャンパスにして本格的は絵付けを施してもいい。 やきものの絵はいろんな楽しみ方があるんですよ。


◎◎◎インタビュアー
なるほど。でも私なんかどうしても絵って苦手なんですよね。

◎◎◎先生
そうですね。陶芸やられる方でも絵心のある方は少ないですよ。
ほんとに絵が苦手で、でも絵を品に描きたいって方には「転写紙」っていう便利なものもあります。この絵をやきものに転写すれば、プロが描いたような絵柄がでる。 プレゼント品なんかにはそういった方法もありですよね。

ただ絵が苦手で、でもなるべく自分のオリジナルで作りたいって方は、やっぱり形で魅せる方がいいと思います。


◎◎◎インタビュアー
そうですか。わかりました。


じゃ、最後にざっと話をまとめると・・・。

まず、いい品を作るには、目利きになる。
しっかりとした技術を陶工から学ぶ。
いい材料(個性的な材料)を使う。
この3点が大事。

もし、いい材料が手に入らなかったら・・・。

絵心のある人は絵付けで魅了する。
絵の苦手な人は造形に変化を。

こういった感じでしょうか。


◎◎◎先生
シンプルにまとめて頂いてありがとうございます。

◎◎◎インタビュアー
はいっ。昔っから、まとめるのは得意なんです。

では先生。今回もいろいろとありがとうございました。

◎◎◎先生
こちらこそありがとうございました。


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